チャックが苦痛を訴えている「電磁波過敏症」とは?

ジミーの兄チャックは自分が「電磁波を浴びると体調を崩してしまう = 電磁波過敏症」だと主張していますが、現実にこういった症状に苦しんでいる人が少なからずいるようです。

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チャックは電気機器を一切使わない生活を送っていて、ジミーがその生活を支えている状態です。体調が悪くなると家の中でもサバイバルシート(space blanket)をかぶったりしています。シーズン1エピソード5「羊飼いの少年」では、警察にテーザー銃を撃たれて入院した病院で、医師に自分が電磁波に対する過敏症なのだと訴えています。また、医師に症状を聞かれ次のように答えています。

皮膚が焼けるような感覚、骨に響く鋭い痛み、筋肉疲労、激しい動悸、かすみ目、耳鳴り、めまい、吐き気、息切れに…

電気をつけるたびにこんな症状が出ていたらまともに生活できないレベルです。

症状は実在するけれど、病気とは認められていない

電磁波を浴びると体中のあちこちが不調になるこの症状、電磁波過敏症(EHS)とか電磁場に起因する特発性環境不耐症(IEI-EMF)と呼ばれる”疾病概念”で、現実にこういった症状に苦しんでいる人が少なからずいるようです。Wikipediaの「症状」の項目を見ると、チャックが訴えているのと似た症状が並んでいます。

ただ、こういった症状を訴える人たちも、本物の電磁場と偽物の電磁場を区別することができないことが実験を通じてわかっています。したがって今のところ体の病気であるとは認められておらず心因性のものであるとされていて、世界保健機関(WHO)も、症状自体の存在は認めているものの医学的診断基準も科学的根拠もないとしています。チャックも医師がこっそりベッドの電源を入れても気づきませんでしたね。

心の問題が身体に不調をきたすことは珍しくないようで、一般によく知られている「うつ病」にも「仮面うつ」と呼ばれる主に身体に症状が現れ精神症状がほとんどない(または気づかない)ものがあります。こういった場合、チャックが「自分は精神病ではない」と断言していたように、本人は身体が痛いのになぜ?と納得できないことが多く、治療の妨げになることが多いとか。

世界中で年々増加している「電磁波過敏症」

とはいえ、実際に苦しんでいる人がいるのは事実で、「電磁波過敏症」「電磁波アレルギー」または「Wi-Fiアレルギー」などと呼ばれる症状を抱える人が世界中で年々増加傾向にあるようです。働くことさえ困難になり、生活ができず法に訴える人も増えています。

フランスでは2015年8月に、電磁波過敏症で仕事ができなくなり人里離れた小屋で暮らさざるを得なくなったと訴える女性に対し、3年間の障害手当金を交付するという判決が出ています。オーストラリアでも電磁場に晒される職場で働いていた人々が頭痛などの不調を起こし、原因は職場にあると訴えて補償金を勝ち取っています。スウェーデンでも法廷で「機能障害」と判断されるなど、疾病とは認められないものの、生活が困難になる障害とみなされるケースが増えているようです。

ちなみに「ベター・コール・ソウル」のロケ地でもあるニューメキシコでも「隣人のiPhoneとWi-Fiのせいで健康状態が悪化した」として143万ドル(約1億7千万円!)の損害賠償を求めて裁判を起こした人がいたようですが、こちらはさすがに敗訴していました

また、アメリカでは電磁波過敏症の人たちが、電波が規制されているウェスト・バージニア州の小さな町に次々引っ越すという事態も起こっているようです。このグリーンバンクという町は巨大な電波望遠鏡があるため電波の発信が規制されており、携帯電話やネットはもちろん、TVやラジオさえも規格外のものは使用できないため、電磁波過敏症の人たちには天国のようなところ。ただ、地域住民との軋轢が問題になったり、望遠鏡自体が近々廃止になる可能性も出てきたりしているようで、騒動はまだまだ続きそうです。

こういったメディアの報道や障害を認める判決などが、さらなる”自称”電磁波過敏症患者を増やしていると危惧する向きもあるようですが、身体性であれ心因性であれ実際に苦しんでいる人がいる以上、早く診断法なり治療法なりが見つかってほしいものです。

余談ですが、チャックがエピソード1「駆け出し」でフィンランド語に翻訳してまで連絡を取ろうとしたヘルシンキ大学の電磁波研究の権威ブランズ・ボーグルソン教授(Professor Brans Vogelson)は架空の人物です。