「ベター・コール・ソウル」S4E2「息の根」なぜジミーは仕事を断ったのか? – 海外の反応 & 製作者の意図

仕事を探しに出向いたはずなのに、しかも採用されたのに、なぜジミーは断ったのか?彼の行動の理由がはっきりしないため、さまざまな議論を呼んでいるようです。

以下「ベター・コール・ソウル」シーズン4、エピソード2時点での考察です。
S4E2までのネタバレを含みます。未見の方はご注意!

シーズン4エピソード1「煙」でのジミーの行動についてはこちら

まさかこんな地味っぽいシーンがあんな衝撃シーンになるとは…。”Suckers.” © AMC

チャックが亡くなった直後だというのに、仕事を探しに出かけるジミー。きちんと面接を受け、採否は後で連絡すると言われて一旦は帰りかけたのですが、何を思ったか事務所に戻り、立て板に水で自分を売り込み始めます。ジミーの熱意に感服したオーナーたちは「採用だ!」と即決しますが、なんとジミーはいきなり相手を罵倒し始め、

マヌケだな。気の毒な奴らだ。
と言い捨て、出ていってしまいました。ひでええええ。

なぜジミーはあんなに怒ったんでしょうか。そもそも断るつもりなら、なぜ事務所に戻ったのか?

海外の反応

掲示板「Reddit」の放送時のライブスレッドを見てみると、ジミーが仕事を断った途端大騒ぎでした。 「 ジミー!おかしくなったか!?」「この展開は予想外」「ちょwww 何が起こった」「俺が見たのは何だ」「ソウルになったってこと?」などなど。「このままジミーがソウルになっていくのを見届けられるかどうか自信ないわ…」「私も…」と心配になっている人、ジミーの行動に大ウケしている人、反応は様々でしたが、みな一様に「こう来るとは思わなかった!」と驚いたようです。

放送後もいろんな意見が飛び交っていますが、あるRedditorさんが「面接のシーンとその意味」というスレッドにきれいにまとめてくれていたので、以下、スレ主さん以外の意見や私の考えも交えつつ紹介してみます。

そもそもなぜ仕事を探しに行ったのか?

チャックのことを考えずに済むから。忙しくしていれば考えずに済む。

もちろん仕事を探すつもりも少しはあったでしょうが、一番の理由はこれでしょうね。

最初の面接 – “ジミー的”アプローチ

ジミーは相手を尊重していたし、質問にもきちんと答えた。「何故弁護士を辞めたのか」という質問はかわしたけど、嘘はついていない。自分はセールスマンではないという欠点も認めた。ただ、面接が終わった時、ジミーは採用されるのは難しそうだと悟る。相手の反応もイマイチだった。

なぜ事務所に戻ったのか?

一旦は帰りかけたジミーだったが「このままでは他のヤツに決まってしまう。どうしたらいい?」と頭をフル回転させ、戻っていく。

後述の「Insider Podcast」でも、ケリー・ディクソン女史(「ブレイキング・バッド」の編集を務めたエディターで、ポッドキャストの進行係)が、ジミーは「いや、俺はこの仕事に付きたい。もう少しトライしてみよう」と思って戻ったと言っています。

例のフンメル人形を確認しに戻ったのでは?」という声も結構ありましたが、思うに、人形の件を思いついたのは、その夜眠れずあれこれ考えていた時で、最初に見たときは頭になかったんじゃないかなーと思います。ただ、あとで人形に価値があると気づいたのは、もちろんミセス・シュトラウス(人形を誰に遺すか遺言を作成した老婦人)のおかげですね。

例のフンメル人形。「私の知り合いも集めてます」
S1E6「羊飼いの少年」より。何度かCMにも出演してくれたおばあちゃん。

ちなみに私は「このまま帰ったら弁護士を辞めた理由を調べられるだろうな…」と思いました。それについて説明しに戻ったのかと(違った)。

戻ってからの演説 – “ソウル的”アプローチ

戻ったジミーは「ソウルモード」をオンにした。ジミーはもはや相手を尊重していないし、質問にも興味はない。場をリードするのは彼で、彼自身虚しいと知っている言葉で相手を言いくるめる。すると、あっさり思い通りになった。即座にだ。彼は労せず欲しいものを手に入れたんだ。

確かに、最初の面接は本来の「ジミー」で、戻ってからは「滑りのジミー(もしくはソウル)」と考えるとしっくりきますね。

なぜ怒って採用を断ったのか?

本来のジミーではなく「滑りのジミー」のほうが欲しいものを手に入れられるということに彼はうんざりした。(略) コピー店のオーナーたちに怒ったのは、「滑りのジミー」のアプローチが成功してほしくなかったからだ。だからほとんど詐欺のような手口に簡単に騙される彼らを責めた。彼らはジミーを受け入れたことで、ジミーに「滑りのジミー(もしくはソウル)」のほうが”効果的”だと証明してしまった。

なるほどー!

スレッドでは、わかりやすくまとめられたスレ主さんの意見に称賛と同意の声がたくさん上がっていました。ただ、最後の「なぜ断ったか」については「概ね同意するけど、もう一つ理由があるのでは?」という声がいくつも寄せられていました。

それはジミーが怒り出したのは「父親を思い出したからじゃないの?」というものです。

製作者はどう言っているのか

ボブ・オデンカーク「彼らを見て父親を思い出したから」

ジミーが仕事を断った理由について、ジミー役のボブ・オデンカーク氏はAMCの「Inside Better Call Saul」で次のように言っていました。

何にも増して、この二人のセールスマンたちはジミーに父親を思い出させた。どんな馬鹿げた話でも信じ込む。それこそジミーが軽蔑することだ。

スレッドで多くの人が指摘していたとおりですね。

ジミーの父親と言えば、S2E7「風船人形」の冒頭で、詐欺師にあっさり騙されていました。幼いジミーでさえ詐欺師だと気づいたのに。
S3E8「転倒」では、「親父さんは客に好かれてた」と言う親友マルコにジミーは「お人よしで金をたかられてただけだ。要領が悪かったんだよ」と苦々しい顔をしていました。

S2E7「風船人形」より。「狼と羊、どっちになりたい?」
S3E8「転倒」より。潰れてしまった父親の店に盗みに入るジミーとマルコ。

ジミーは幼い頃から「カモ」にされる父親を見て「こうはなりたくない」と思っていたのに、そんな父にそっくりなオーナーさんたちを目の当たりにしてイラつき、怒りが爆発した…ということのようです。

余談ですが、チャックは父親の店がジミーのせいで倒産したと思っていたようですが、ジミーもお金をくすねていたものの、実際には父親が「カモ」にされて損をした金額のほうが大きかったんじゃないの?と思ったりします。

グールド&ギリガン 「俺みたいなクソ野郎を雇うやつには雇われたくない」

一方、製作者のピーター・グールドヴィンス・ギリガンはまた別の面を挙げています。

このエピソードの「インサイダーポッドキャスト」で、こんなふうに語っていました(抜粋 & 意訳)。

グールド:前のエピソードで、ジミーは自分にも責任があると知りながらそれをハワードに押し付けたけど、そのときから抑えていた拒否と怒りの気持ちが、この二人を見て溢れ出した。彼は仕事を得るために彼らを口車に乗せ、ある意味騙したけど、あっさりとその口車に乗る彼らの間抜けぶりに怒りを抑えられなくなったんだ。

ギリガン:彼は今、妙に自滅的(自己破壊的 = Self-destructive)になっていて、心の中はぐちゃぐちゃで無秩序で、彼自身、何がしたいかわかってない。

グールド:ここで起こったのは、「私を入れたがるクラブには入りたくない(※)」ということだ。受け入れられた途端「いや、あんたたち大丈夫か。どこの間抜けが俺みたいなクソ野郎を雇うんだ?」と。
グルーチョ・マルクスの有名な言葉

ジミーが本当に怒っているのは自分自身、ということかもしれません。

前回のエピソードも今回も、オデンさんと製作者の解釈が微妙に違うんですが、どちらが正しいというわけじゃなくて、いろーんな感情が複雑に入り組んでいて、まさに(前回)グールド氏が言っていたように「一言では言い表せない」のかも。Redditorさんたちの推測もあながち間違っていないと思います。

いやー、改めて「ベター・コール・ソウル」はすごいなー!と思いました。特にシーズン4に入ってからは、もともとすごい脚本&すごい演技にさらに拍車がかかってて、もう「凄まじい」レベルに…。どの登場人物も薄っぺらじゃなく、リアルに人間っぽくていろんな面を持っていて…。

あっ、人間ぽいで思い出したんですが、今回もハワード…!ハワードがかわいそうすぎて…(すっかりハワード推し)。でも、前出のポッドキャストで、スタッフのどなたか(声で判別できない)が、前回のエピソードでは「ハワードかわいそうに…」と思っていたけど、キムがHHMに来るシーンを見たら「彼女の言うとおりだ!何考えてんだハワード!」ってなった、って言ってたのがおかしかったです。
このシーンのキムの愛情深さにもうるうるきましたよね。なんだかすっごい切なくなりました。あるスタッフさんは撮影中キム役のレイ・シーホーンの演技を見て素で泣いたそうです。わかるすぎる…。